不適切な水質管理が最悪の事故を招く
ここ数年、浴槽内で増殖したレジオネラ属菌による肺炎から死者が発生した例など、水質管理の不徹底による事故が多発しています。プールでも、咽頭結膜熱などの感染症やアトピー性皮膚炎への影響が指摘されています。
事故の発生は施設運営にとって大きなマイナス要因です。被害者への損害賠償、施設の営業停止、また管理責任として業務上過失致死傷を問われた例もあります。事故に至らないまでも、プールや浴槽の水質管理を疎かにしていると、利用者の減少につながりかねません。
水道水や井戸水を原水に使ったプールや浴槽の水質管理で、一般的な消毒方法が塩素消毒です。塩素剤を投入して、水質衛生管理でもっとも重要な指標である遊離残留塩素濃度を管理していきます。
大切なのは塩素消毒の基本ノウハウを知り、最適な塩素濃度を保つこと。水質管理の重要性をいま一度確認し、塩素の特性を知ることが大切です。
消毒効果はpH(水素イオン濃度)にも左右される
水質管理の指標で、遊離残留塩素濃度とともに大切なのがpH(水素イオン濃度)です。pHが酸性(pHが低い)になると、ろ過装置などの腐食、ろ過不良による水の汚濁などが生じてしまいます。また利用者の目やのど、髪、肌にも悪影響があります。一方、アルカリ性(pHが高い)になると塩素消毒力が低下。細菌が増殖するため水質が悪化します。
塩素消毒の効果はpHと密接な関係があります。水が中性から酸性ならば、水中に溶けた塩素は次亜塩素酸(HOCl)に変化し消毒効果が高まります。逆に水がアルカリ性になると次亜塩素酸イオン(OCl-)に変化し、消毒効果が低下します。pHの最適値は6.8~7.4の中性。いかなる状況でも、水質を中性に保つことがポイントです。
汚れと反応してできた結合塩素が消毒効果を低下させる
塩素剤は、汚れなどと反応すると特性が変化します。塩素は「遊離塩素」の形で強い消毒力を発揮します。それが人体の汗、化粧品、鼻汁、尿(アンモニア)…など水中に含まれる汚れと反応すると「結合塩素」に変わります。結合塩素が増えると、目の痛みや特有の塩素臭の原因となるばかりでなく、本来の消毒力も弱まります。遊離塩素と比較した場合、結合塩素は1/80~1/200程度の消毒効果しか発揮できません。
このため結合塩素を減らし、遊離残留塩素濃度をつねに適正値である0.4~0.8㎎/ℓに保つことが必要です。また結合塩素は0.4㎎/ℓ以下が目安となります。
ここで注意しておきたいのは水中の塩素はつねに消費されているということ。消毒力を発揮する有効塩素が減る速さは入場者の数、水温など条件によって変動します。大切なのは定期的に一定量の塩素を投入することではなく、消毒に有効な遊離塩素の減少分をつねに補充していくことです。
ORP(酸化還元電位)測定で、水質管理を万全に
すでに述べた残留塩素濃度とpHの管理だけでは、万全ではありません。両指標に加え、水質管理を行う上で有効なもう一つの指標がORP(酸化還元電位)です。欧米、なかでも衛生基準に厳しいドイツでは、水質管理指標にORPを盛り込み、その測定を義務づけています。
ORPとは、プール水や浴槽水のウイルスや菌への消毒力を示します。プール・浴槽水のORP値が高いほど、次亜塩素酸(HOCl)量は多くなり、消毒効果が高い状態を保っていることになります。
安全な水を提供するには消毒力の総合評価が不可欠
ORPの特徴は遊離塩素、および結合塩素の残留濃度、pHによって変動すること。適正なORP値であるかどうかを把握し、消毒力を総合評価することができます。
プール・浴槽水の適正なORP値はpH6.8~7.3のとき750mV以上、pH7.3~7.4のとき770mV以上。これらの数値を維持することで、塩素剤が消毒効果を発揮しやすくなり、理想の水質を保つことが可能です。
繰り返しになりますが、安全で快適な水質管理を行うには残留塩素濃度、pH、ORPを総合的に把握しておくことがポイント。重要なのは水質管理に有効な3つの指標を連続測定して、必要に応じた塩素剤を投入すること。徹底した水質管理で、利用者にとってつねに安全で安心できる快適な水を提供できます。
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